日本最大級の独立系運用会社 オンライン直販をついにスタート 投資信託はメーカーから直接買う時代に

1998年に創業されたベイビュー・アセット・マネジメントは、日本における独立系資産運用会社のパイオニアだ。独自の運用商品を主にプロの投資家である機関投資家へ提供し続け、契約資産残高は1兆円を超えた。そんな同社が2025年4月に個人投資家を対象とするオンライン直販を開始する。第一弾商品として取り扱うのは、機関投資家が認める運用戦略を採用した投資信託。満を持して個人向けの直販市場に参入する同社の挑戦について、創業者で社長兼CEO(最高経営責任者)の八木健氏に聞いた。

世界から大きく取り残された日本の資産運用業界
質の良い商品を消費者へ直接届ける時代に

八木 政府が掲げる資産運用立国の実現に向け様々な取り組みが行われる中で、NISAの刷新は大きな転機となりました。資産運用への関心が高まり、個人投資家が増えている現状を喜ばしく感じています。一方で、日本の資産運用業界にはいまだに数多くの課題があることも事実です。資産運用が国民に根付くためには、その解決が不可欠だと考えます。

例えば、個人の資産運用の中核商品である投資信託(ファンド)を購入する場合を考えてください。通常は証券会社や銀行などの販売会社を介して購入し、ファンドのメーカーである運用会社から直接買うことはほとんどありません。そして日本の運用会社の多くが、販売会社である証券会社や銀行の子会社です。そのため運用会社は、投資家ではなく販売会社の意向に沿った商品をつくりやすい環境にあります。こうした販売会社主導の構造では、真に投資家の期待に応える運用商品・サービスの提供は難しいといわざるを得ません。

八木 これも投資家のニーズではなく、販売会社の意向に沿って、その時々で売りやすい商品をつくってきた結果でしょう。大手運用会社の商品ラインアップを見ると、本数は豊富ですが、どこも似たような品ぞろえで特徴がありません。

しかも、販売会社経由だと運用会社の投資哲学やファンドの特徴などが伝わりにくく、投資家は自分のニーズに合致した商品を見つけにくい点も問題です。結果的に多くの個人投資家が「売れている」「人気ランキングの上位」などを基準にファンドを選んでいます。

こうした現状を改善するには、まず販売会社経由ではなく、個人が運用会社から商品を直接購入できる環境の整備が必要でしょう。金融庁が公表した「資産運用業高度化プログレスレポート(2023年)」によると、米国のリテール向けファンドの販売チャネルでは、運用会社による直販が銀行と同じ18%を占めています。日本では証券会社と銀行が大半で、運用会社の直販は無いに等しいことがわかります(図表1)。

アパレルや家電、食品などさまざまな業界でメーカーが自社サイトを通じて、消費者に質の良い商品を直接販売するD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)が当たり前の時代です。そうした時代の流れに日本の運用業界は大きく取り残されています。

【図表1】 日米のリテール向けファンドの販売チャネルの比較
(複数回答有・人数割合)

出所:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023(概要版)」P11

八木 その通りです。同レポートでは、独立系資産運用会社の強みとして「利益相反管理」「運用力強化に注力」「経営陣の長期コミットメント」などを挙げています(図表2)。こうした独立系ならではの強みを生かし、投資家のニーズに沿った専門的で洗練された商品を開発し、販売会社を経由せず個人投資家に直接届ける――。これが日本の資産運用業界の課題解決に資するビジネスモデルであり、当社はそれを実践しようとする数少ない運用会社です。

【図表2】独立系資産運用会社の強み

出所:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023(概要版)」P18

大手運用会社とは一線を画すブティック
洗練された運用商品だけを専門的に取りそろえる

八木 当社は創業27年を迎えた日本最大級の独立系運用会社です。独立系とは、親会社をはじめ外部に影響力のある株主を持たず、金融商品の販売会社である証券会社や銀行などからも独立した存在を指します。

そして、単に独立系というだけでなく、「マルチ・ブティック型」の運用会社である点も当社の特徴です。日本の独立系運用会社は、日本株など単一のアセット・クラスや商品に特化しているケースがほとんどです。

当社は、国内外の株式や債券、プライベートアセット(未公開資産)など複数のアセット・クラスを投資対象としています。その上で、「百貨店(デパート)型」の大手運用会社とは一線を画す「専門店(ブティック)型」として、洗練された運用商品のみを専門的に提供し、高度な投資家ニーズに応えています。

当社の顧客の大半は、金融機関や年金基金、学校法人、ファミリーオフィス(資産管理会社)といったプロの投資家です。契約資産残高における個人向け公募投信の割合は、現状5%未満です。

まずは日本を代表する機関投資家に認められることが、独立系マルチ・ブティック型運用会社としてのブランド力を高めるという方針の下、27年間経営してきました。その甲斐もあり、当社の運用商品・サービスは目の肥えたプロの投資家から支持され、現在の契約資産残高は1兆円を超えています(図表3)。

【図表3】ベイビュー・アセット・マネジメントの発展
~契約資産残高と役職員数の推移

八木 運用会社として、販売会社を経由せず個人投資家へ直接アクセスすることは、創業当初からの夢でした。28年目にしてようやくそれを実現する体制が整い、いよいよ個人向けのオンライン直販をスタートします。

なぜこれほど時間を要したのかというと、一つには当社のような独立系運用会社がオンライン直販を行うには、システム投資を含めた社内インフラ整備のため莫大な投資が必要となるからです。また、運用会社としてブランド力を高めるには、相応の時間が掛かります。当社は、同業他社とは異なる専門的で洗練された運用商品の提供を通じ、長い歳月をかけてプロの投資家からの信頼を勝ち取りトップ・ブランドとしての地位を築いてきました。

さらに運用は長期投資が原則ですから、それを担う運用会社には長期的な視点に立った社員構成や人材育成が求められます。その点、当社は34歳以下の社員が最も多く、中堅やベテランの社員もバランスよく在籍するなど、運用会社としては理想的で活気あふれる社員構成といえます。これも一朝一夕で実現したのではなく、長い時間を掛け生え抜きの新卒社員を含め若手が成長し、ようやく構築できた組織体制です。

長年培ってきた運用実績やブランド力、他社にはない独自の商品ラインアップ、莫大なIT投資に耐えうる体力、そして長期的な経営ビジョンを見据えた社員構成――。これらが整った今だからこそ、満を持して個人向けのオンライン直販に参入するのです。

リスクに敏感なプロ投資家が認めた運用戦略を
オンライン直販の第一弾として個人に届ける

八木 第一弾として、オルタナティブ資産を投資対象とするファンドを予定しています。オルタナティブ資産とは「代替資産」という意味です。上場株や債券といった伝統資産を代替する「最先端の投資対象」といえばわかりやすいかもしれません。例えば、不動産や未公開株、インフラへの投資などがあります。

世界最大級の機関投資家である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が13年度から投資するなど、オルタナティブ資産への資金流入は、近年増加傾向にあります。GPIFが保有するオルタナティブ資産の残高は、23年度末時点で約3.7兆円と、19年度末から4年間で約4倍の規模に達します。また、東京大学や東北大学など国立大学でもオルタナティブ投資を積極化しているという報道もあります。

今回、我々が提供するのは、オルタナティブ投資の中でも貿易金融の一種である「サプライチェーン・ファイナンス」に着目した運用戦略です。国際貿易における企業間の商取引では通常、輸出業者(商品・サービスの売り手)が輸入業者(商品・サービスの買い手)に対して請求書を発行し、一定期間経過後に支払いが行われます。この資金のやり取りを円滑にするのが、サプライチェーン・ファイナンスです(図表4)。グローバル貿易や世界経済のお金の流れに欠かせない仕組みといえます。

【図表4】サプライチェーン・ファイナンスのイメージ

出所:IFC(インターナショナル・ファイナンス・コーポレーション)発行のSCF Knowledge Guideを基にベイビュー・アセット・マネジメント作成

八木 当社は、この仕組みを活用した運用戦略を、銀行を中心とする機関投資家向けに21年から提供してきました。現在の運用残高は2,700億円以上に達します。リスクは限定的でありながら、安定的なリターンを実現する当ファンドのパフォーマンスを、リスクに敏感なプロの投資家たちが認めています。

これと同じ運用戦略を用いるファンドを、第一弾商品として、個人投資家に直接オンラインで提供します。ローリスクで銀行預金を顕著に上回るリターンを期待できるため、預貯金などに眠っている資金の受け皿としてぜひ利用していただきたいと思います。

八木 もちろんです。ぜひご期待ください。そしてまず何より、運用商品をメーカー(運用会社)から直接買うという選択肢があることを、多くの個人投資家に知っていただきたいと思います。

同じオンラインでも、既存のオンライン証券はいわばスーパーマーケット(量販店)のようなイメージでしょう。豊富な品ぞろえは魅力ですが、各社とも扱う商品に大きな違いはありません。当社は、他では手に入らない質の良い運用商品だけを取り扱い直接届けるブティック型の運用会社として、個人投資家の選択肢を広げたいと思います。

運用商品のことは、それを開発した運用会社が一番よく理解しています。直販を利用していただくことで、私たちはその商品の背景にある哲学や思いを投資家の皆様に直接お伝えすることができ、メーカーとしての説明責任を果たせます。

当社では実際の運用担当者を公開していますし、運用状況に関する詳細なレポートなど手厚いアフターフォローも提供しています。販売会社では実現できない、ブティック型運用会社ならではのきめ細かいサービスを日本全国どこに居ても享受できます。また、販売会社を経由しない為、各種仲介コストが発生しない点も投資家にとっては魅力的なポイントです。

今回手掛ける当社のオンライン直販は、日本の個人投資家に資産運用の新たな選択肢を提供することに他なりません。この取り組みをきっかけに、直販を手掛ける運用会社が増えることを期待します。そして各運用会社が切磋琢磨(せっさたくま)しながら魅力ある商品をつくれば、日本の資産運用業界は高度化していくでしょう。それこそが、真の資産運用立国の実現につながるはずです。当社のオンライン直販がその第一歩になれば本望です。

ベイビュー・アセット・マネジメント
代表取締役社長 兼 CEO 八木 健 氏

1984年 野村證券入社。98年米国サンフランシスコのロバートソン・スティーブンス・インベストメント・マネジメント社(RSIM)からの出資と支援を得て、RSアセット・マネジメント設立、同社代表取締役に就任。2002年4月、自らが中心となり自社株式をRSIMより取得(MBO)する事で、名実共に独立系運用会社とし、07年にベイビュー・アセット・マネジメントへ社名を変更、現在に至る。

※2025年4月21日~2025年5月21日に日経電子版広告特集にて掲載したものを転載。
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